一般社団法人とやまのめ

地域

2023年3月に設立された「とやまのめ」は、射水平野が広がる射水市西高木にある築100年の古民家を拠点に、地域をイキイキとさせる活動をしている団体。会員は県内外の若者から年配者まで幅広く、学生や多様な職業の60人が集まっている。地域や既存組織の枠を超えた会員がアイデアを出し合い社会の課題解決に取り組んでいる。

地域のイキイキを生み出す

メンバーから「村長」と呼ばれる代表の中谷幸葉さん(31)は茨城県出身で、富山県とは縁もゆかりもなかった。子供の頃から教員志望で、学生時代に「社会に出る子どもを教えるには、まず自分が社会のことを知るべき」と考え、大手都市銀行に就職。法人担当をする中で、丸井の創業者、青井忠治氏(旧小杉町出身)ゆかりの企業アトム(東京)の青井茂社長と出会い、富山県の地方創生に向けまちづくり会社「TOYAMATO(とやまと)」を立ち上げるにあたって転職し、担当役員として2019年富山に移住した。

とやまのめ 中谷さん

TOYAMATOは自治体の活性化事業や、県産食材を生かした飲食店の開発・運営など、いくつも事業を創出している。その取り組みの中で知り合った人からこの古民家を紹介され、22年に富山市内から移り住んだ。家屋の片付けや広大な敷地の草刈りをSNSで発信すると、会ったこともない人が県内各地からやってきて、手伝ってくれた。

その年の11月、地元の人から一つの要望が寄せられた。古民家の庭には地域の目印にもなっている巨木があり、ライトアップしていた時期があるという。「もう一度見たい」という声を受け、これまで集まった新しい仲間と、地元住民が協力して、1ヵ月の準備でクリスマスツリーの点灯を実現することができた。

実践する人を育てる

点灯式には、地域外の人が50人にも膨らんでおり、学生、教師、建築家、木こり、その他にも多様な人々が協力してくれたのを見て、「シブヤ大学のようなコミュニティの学校ができるのでは」と思ったという。シブヤ大学とは、校舎のある教育機関ではなく、ボランティアで運営している非営利団体。渋谷の街を拠点として身近な話題から社会問題まで、参加者の関心事や問題意識をみんなと一緒に学ぶ活動をしている。

そこで、地域の悩みを色々な人の得意分野と掛け合わせて解決していこうと「とやまのめ」を立ち上げた。現在、3つの事業が活動の柱となっている。氷見の漁場の海藻を食べ尽くすウニを、規格外の野菜で育てて養殖する「ウニとやさいクルプロジェクト」。担い手不足の農業の現場にスポーツ選手の活躍の場をマッチングし、農業振興と健康増進、食への関心を促す「アグリスポーツ」。そして活動の原点でもあり人が集まる象徴の「シンボルツリープロジェクト」。メンバーの経験や考えを生かして、継続的に取り組みを進めている。さらに毎月の定例会では、これ以外にも新しいテーマが次々と持ち上がっている。

中谷さんは富山に移り住んで5年目。「富山には手つかずの“余白”がまだまだある」と感じている。様々な悩みを抱えている地域の人との距離も近く、若い人がその課題解決に挑戦できることが多い。そして色々な人が協力してくれるのが一番の魅力で、その分恩返しをしなくてはという使命感もある。

子供の頃から目指した先生への道をあきらめた訳ではない。「こうした活動自体が人を育ててくれる。この団体がそのまま学校になることが目標です」と話し、誰でも学び、実践できる活動を広げたいと邁進する。

月刊富山県人 2024年2月号

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