とやま未来共創チーム(富山市)

地域

富山市の人口は2010年の42万1千人をピークに減少に転じ、現在40万6千人(23年末時点)、30年には39万7千人に減少すると予想されている。一方で、50歳以上の人口は20万人から30年には20万9千人に増加すると見込まれている。このような少子高齢化は日本全国の共通課題で、社会活動にも経済活動にも様々な影響が出始めている。

そんな中、富山市では2020年に、市民が未来を描く場所「スケッチラボ」を開設した。狙いは、未来を市民が考え、市民に実現してもらうこと。そしてその仲間づくりをサポートすることにある。

若者のチャレンジを応援

とやま未来共創チーム

とやま未来共創チーム村上会長

スケッチラボを運営するのは産学官連携による「とやま未来共創チーム」、会長を務める村上宏康さんは不動産会社のワプラス(富山市三番町)を創業した起業家。苦労しながらも色々な人からアドバイスをもらい、夢に向かってチャレンジしてきた。自身の経験から、挑戦する人を支援する場、さらには挑戦する気持ちに火をつける場が必要だと感じ、当時所属していた富山商工会議所青年部のメンバーと富山市に対する政策提言として取りまとめた。ちょうど市でも同様の取り組みを模索していたこともあり、検討、事業化され、経済界や大学の参画も得てチームが結成された。

チームでは学生や社会人が考えたビジネスプランを競う「スケッチオーデション」をはじめ、出会いの場やチャレンジの機会をつくり、学生起業家や脱サラして新しい技術の社会実現を目指す起業家も生んでいる。

「大人になると安定志向が強くなり、その価値観を子どもにも押しつけがちだが、若い人に『夢を語る場』を与えると目の色が変わる。若い人には夢に向かって自分の道を選択して、挑戦してほしい」と話す。

公助から自助・共助へ

市民が描く未来がまちの未来

富山市スマートシティ推進課 岡村菜々さん、榊原奈央さん

これまでの行政は、豊かな財源を元に人口増加や経済発展に対応し、道路や学校の整備、商業施設の設置など、住民の要望に応えてきた。しかし現在は税収が伸び悩む中、インフラの老朽化対策や高齢化に対応する福祉の費用が増え、未来に向けたチャレンジの予算が十分確保できなくなっている。さらに地域コミュニティの担い手不足から、市への相談や要望が多様化し、市役所のマンパワー不足も深刻になっている。

市ではスケッチラボを拠点として、市民同士が「まちの未来」を考える場「とやま未来共創会議」を立ち上げた。事務局を務める市スマートシティ推進課の岡村菜々さんは「心がけているのは対話」だという。

これまでも市主導による官民連携のまちづくりの取り組みが行われてきたが、多くは市民の要望やアイデアを聞く場になったという。そうではなく、老若男女、市民、行政が対等にまちの課題を考え、それぞれが思い描く未来に向けて行動することを目指している。

丸ちゃん家

会議の中から、参加者の自宅兼店舗を「丸ちゃん家」として地元の人に開放し、地域のつながりを深める活動や、使い終わった子どもの学習道具をリユースする試みが始まっている。岡村さんは「小さな一歩が生まれている。まちの未来を思い描き、その未来へ向かって自分ができること、やりたいことを考える人が、地域の中に1人でも多くなって欲しい。行政はそのためのコーディネーターとしてお役に立ちたい」と話す。

月刊富山県人2024年3月号

とやま未来共創チーム(スケッチラボ)ホームページ

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