高岡市の西部に広がる西山丘陵にある国吉地区。小矢部川沿いや能越自動車道の近くに工業団地が立地する一方で、地区全体には里山と田園の美しい風景が広がり、また30年前から栽培が始まったリンゴは「国吉りんご」として親しまれている。
里山の振興と地域の魅力発見
この里山の資源を生かし、地域の活性化に繋げようと2009年、国吉地区の17の自治会や各種団体が「里山活性化協議会」を結成、翌10年には活動拠点となる「里山交流センター」も整備された。
最初に取り組んだのが、里山に親しむための遊歩道の整備。地域の住民らが協力して森の中に約1・7㌔㍍の道を切り開いた。遊歩道は子どもから高齢者まで自然に親しむことができ、途中には高岡のまちを見渡す展望台も整備されており、健康増進を目的に散策しに来る人も多いという。
地区の人だけでなく、高岡市内の人に広く里山の魅力を知ってもらおうと、様々な交流イベントを開催している。タケノコ掘りやリンゴの収穫、また地域の女性が中心になって味噌やかぶら寿司など、手作りの家庭の味を伝えるイベントも行っており、最近は市外からの参加者
も増えているという。
また、江戸時代に現在の高岡の町が開かれるまでは、小矢部川の左岸が重要な街道として栄えたこともあり、国吉地区には歴史ある寺社や古墳などの遺跡が数多くある。地区の住民を中心に歴史探訪会を実施しているが、地区外の参
加者も増えているという。
交流から移住へ
現在、協議会は7つの部会を設けて、1畝オーナーの農園での農業体験や、竹細工教室、地元農家の農作物の直売など毎月多様なイベントを開いている。収穫体験など人気のイベントには定員を超える応募があり、農産加工室や研修室の利用も含めると、2023年度には延べ6千500人がセンターを利用した。
協議会事務局長で里山交流センターの所長も務める笹島和夫さんは「里山の魅力発信に繋がっていると同時に、地区住民にとっても地元の文化を再認識する良いきっかけになっている」。一方、少子高齢化により空き家も増加傾向にあるとして、「自然豊かな地区への移住者呼び込みにもつなげていきたい」と話す。
富山県人 2024年5月号