株式会社富山市民プラザ(富山市)

地域

富山市大手町の富山市民プラザは、外国語専門学校、ギャラリー、音楽ホールなどの公的施設や、スポーツクラブ、飲食店などの商業施設などが入る複合施設。その運営会社の第3セクター㈱富山市民プラザは近年、まちの賑わいづくりに力を入れている。

同社は1987年に設立され、89年に市民プラザが完成。施設内のコンサートやイベントなどを企画して、まちなかへの集客を図ってきた。2005年からは総曲輪の再開発で建設された立体駐車場の管理を担い、19年には中心市街地の活性化に取り組んできた㈱まちづくりとやまを吸収合併し、総曲輪通りの全天候型広場「グランドプラザ」や農産物直売所「地場もん屋総本店」などの運営を引き継いだ。

以降、次々と新たな賑わいの創出、地域の活性化の取り組みを進めている。

市内の農産品が集まる地場もん屋総本店

不動産業でまちを元気に

23年、総曲輪から近い荒町に、学生向けシェアハウス「fil(フィル)」がオープンした。5階建ての空きビルを取得して全面改修したもので、32室の居住空間と、1階には地場もん屋総本店の新鮮な食材を使った食堂が入り、隣接地には庭園スペースとコインランドリーを整備して一般にも開放している。

中心市街地から神通川を渡ったところにある富山大学五福キャンパスでは約7千人の学生が学び、その7割が県外出身者。ほとんどが大学周辺のアパートから通い、買い物には車で郊外に出かける学生も多く、「まちなか」を知ることなく卒業していく学生が多いという。この状況を憂えた都市計画が専門の久保田善明富山大教授が、「学生のまちなか居住」を提案したことが発端となり、富山市民プラザが事業化に挑戦した。

入居する学生はアルバイトや祭りなどで地域に馴染んでいるだけでなく、商店街や企業経営者が「若い人の意見を聞きたい」と新たな交流が生まれている。昨年は埼玉県出身の入居者が市内で就職し、市民プラザの京田憲明社長は「学生が富山のまちに関心を持ち、定着するきっかけになれば」と期待を膨らませている。

昨年からは全国的なネットワークに加盟して、空き家管理も始めた。遠方に住む人の家を月に一回見回りに行くというもので、まちの診断を担うのが目的。空き家は時間が経つにつれ、所有権が複雑になり、建物の状態も悪くなるため、早いうちから管理を通じて所有者と繋がりを持つことで、空き家の活用がスムーズにいくことを期待している。こうした事業のために、17年に宅建業を開業し、京田社長をはじめ、社員も順次宅建士の免許を取得したという。

企業経営者と交流するシェアハウスの入居学生

まち歩きで富山の魅力発信

さらに22年には旅行業登録をして、まち歩きツアーを始めた。市の中心部は商業施設だけでなく、越中売薬やます寿し、美術館など歴史や文化に触れられる場所も多く、2〜3時間のツアーを開催している。旅行業取扱管理者の資格を取得した中屋州策サブマネージャーは「観光客だけでなく、地元の人にも喜ばれている」と言い、桜の名所で知られる松川の遊覧船に初めて乗ったという富山市民も多い。様々なツアーを企画して、まちなかの魅力を発信していく。

富山市民プラザは「生活価値創造」をコンセプトに掲げている。京田社長は「取り組んでいることは利益面で民間企業がやりたがらず、失敗のリスクから行政ではチャレンジできないようなことだが、大切なのはまちの賑わいに繋がるかどうか。新しい工夫をしながら遊休不動産の活用やまちなかの魅力向上に繋げていきたい」と話す。

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