砺波市の中山間地域で、閉園になった幼稚園の園舎を拠点にイベントやカフェが積極的に開かれ、人口が減少する中、訪れる関係人口を新たな地域の活力に繋げる取り組みが行われている。
幼稚園跡地を交流の場に
栴檀野地区は庄川右岸の丘陵地から山間部にかけての11集落で構成され、356世帯968人が暮らしている。この20年間で人口は500人減少し、少子高齢化も進んでいる。児童の減少を背景に、市は2018年、栴檀野幼稚園を2020年3月に閉園することを決めた。
閉園の決定を受け、栴檀野自治振興会では、地域の将来を考えようと「せんだんの未来会議」と題した会合を3回開き、延べ155人の住民が地域の魅力や活性化策を話し合った。会議で出た地域づくりのアイデアを実行するため「せんだんの活性化協議会」を設立、活動の拠点として幼稚園の園舎を市から譲り受け、閉園から1年後の2021年4月、コミュニティ施設「せんだんのHILL(ヒル)」としてオープンした。

閉園した幼稚園舎を活用した「せんだんのHILL」

せんだんのHILLにはカフェやイベントに地域内外から人が集まる
施設は会議で出た意見を参考に、集会やイベントを行うレンタルスペースや幼児教育の拠点を設け、キッチンを備えたカフェスペースも整備した。未来会議では様々なアイデアが出たが、「実際に施設で活動する人は少なく、カフェや居酒屋などを協議会メンバーで何とか運営をしていた」と協議会の事務を担当する北島昌幸さんはオープン当初を振り返る。しかし、地域外から手作りケーキのカフェやヨガ教室を開く人が増え、また大学生がフィールドワークとしてカフェの運営や地域の行事に参加するようになり、これまで地元の人しか見かけなかった中山間地を色々な人が訪れるようになった。北島さんは「人口が減る中で、地域に関わる人が増えてよかった」と話す。
生きがいを持てる地域に
交流人口の拡大に大きく貢献した一人が協議会メンバーでもある米山愛さん。富山市出身で、東京で生活していたが、2014年に夫の故郷である栴檀野に移り住んだ。
自然環境も人間関係も豊かな田舎暮らしを楽しみながら、幼い子どもの育児に励んでいたが、幼稚園の閉園は家族の問題でもあり、また地域の過疎を実感するきっかけとなった。子育て世代として協議会のメンバーとなってHILLの運営に携わるとともに、自身でも親子向けのイベントなどを企画して、地域外から多くの人を呼び込んできた。

米山さん(前列右)は空き家を改装しゲストハウスmusubibiを開業
県外からの講師や参加者が増える中で、空き家を改装し、懇親会や宿泊もできるようにと、ゲストハウス「musubibi(ムスビビ)」を2024年にオープン。昼はカフェとして営業し、子育て世代が集まるようになり、水田や寺など外でのイベントも開催し、過疎の村に子どもの声が聞こえるようになった。米山さんとの出会いをきっかけに、カフェを開いたり、宿泊体験をしたりして栴檀野ファンになり、移住する人も出始めている。地域外から人を呼ぶだけでなく、毎週「地域カフェ」の日を設け、地域の人との交流も大切にしている。
新たに取り組み始めたのが、家具や古道具などのリサイクル事業で、別の空き家を活用して工作体験もできる古道具屋「gurubibi(グルビビ)」をオープンした。単なるリサイクルではなく、使われなくなった古道具の再生や、端材を使った工作などの体験も行う。
もともと栴檀野は建具産業が盛んな地域で、地元の木工職人にも関わってもらいたいと考えている。「自分が年を重ねていく地域で、モノが大切にされ、そして若い人もお年寄りも生き甲斐を持って生活できる地域づくりに貢献したい」と話す。
月刊富山県人 2026年6月号

