公共ライドシェア「なんモビ」(南砺市)

地域

 南砺市は3月24日、南砺市版公共ライドシェアの本格運行を開始した。タクシー会社5社と連携した事業で、自治体とタクシー会社が共同でライドシェアに取り組むのは全国初の試みだ。

 専用のスマホアプリ「なんモビ」から、利用日時と乗車地、目的地を入力すると、その移動に最適なタクシー会社に繋がり、配車ができない場合には登録されているライドシェアドライバーに依頼がいく仕組み。ドライバーは、2種免許を持たなくても講習を受けることで登録することができる。

厳しい地方の交通事情

城端と高岡を結ぶJR城端線

 南砺市には砺波、高岡、富山、金沢など市外と結ぶJR城端線や民間バスが運行し、これを補完する形で市営の「なんバス」が走っている。

 いずれも収支は赤字で、大動脈とも言えるJR城端線は、今後、旧北陸本線を継承運営している「あいの風とやま鉄道」に移管されることが決まっている。

 

市内を走る市営バス「なんバス」

 そして平野部から山間地に至る南北39キロ、東西26キロメートルの広大な南砺市の市民の移動を支えているのが路線バス。民間のバス路線は減便や短縮を余儀なくされ、廃止になった路線もある。市は旧町村から引き継いだ公営バスを再編し、市内を網羅する「なんバス」を維持してきたが、路線ごとの利用者のばらつきが大きく、収入に対して、車両の維持や更新等を含めた運行経費が大きく上回っている。

 

デジタル技術で最適な交通を

 そこで、市はこれまで自動運転バスの実証実験や、利用予約があった時にだけタクシー車両を走らせる「デマンド交通」の実証運行を行ってきた。また井波地区では、交通課題に取り組む市民の団体「イドウラボ」も発足し、交通弱者向けの運行ルートの実証実験を実施するなど、様々な取り組みが行われてきた。

 こうした実証の蓄積の上に、地域によって異なる交通事情を考慮して、公共交通にタクシー会社や市民ドライバーも加わって最適な交通体制を構築しようというのが南砺市版公共ライドシェアだ。

 現在、タクシー会社の拠点があるのは旧井波町、福野町、福光町、城端町、平村の5地区。これを補う市民のライドシェアドライバーの登録は近く6人になる見込みで、その中にはバスの本数が少なく、タクシーの事業所がない旧利賀村地区の住民も含まれている。市では五箇山地区でのライドシェアの可能性にも期待をしている。

専用のアプリで配車を予約する

 まずは、木、金、土曜日の17時から24時の限定でサービスを始めたが、今後市営バスの再編も考慮して、様々な可能性を検討していく。さらに地域ごとに観光スポットが点在し、季節ごとに伝統行事やイベントも多く、宿泊施設にも周知して、観光客向けにもPRしていく方針だ。

 また、地域ならではの新たな交通課題も表面化している。イドウラボが昨年度実施した交通事情に関するアンケートでは、子どもを持つ親世代から、クラブ活動などの送迎に負担を感じるとの意見が多く寄せられたという。

 近年、児童数の減少や教育現場の働き方改革を踏まえ、学校で指導していた部活動の地域クラブへの移管が進められており、市内でもすでに多くの中学生が学校の枠を超えたクラブで活動をしている。広い南砺市ではその送迎が親の負担になっているという。

 広大な地域の多様な交通課題に、デジタル技術と地域の力を合わせた南砺市の挑戦に期待が寄せられる。

 

富山県人令和7年5月号

なんモビホームページ

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