ノッカルあさひまち(朝日町)

地域

人口約1万人の朝日町は65歳以上が町民の46・0%と県内で最も高齢化が進む中、デジタル技術を活用した行政サービスが全国から注目を集めている。その筆頭が2021年に開始したマイカー乗り合いサービスの「ノッカルあさひまち」。以前から行政サービスへのIT技術の導入を模索しながらも町の問題解決に直結するサービスが見つからない中、20年に町を訪れた大手広告代理店の博報堂と一緒に考えながら作り上げたサービスだ。

 〝お互い様〟をスマホで繋ぐ

町では各地域を結ぶコミュニテイバスを運行しているが、3台の車輌で9路線をまかなっており、運行間隔が開いて利便性に問題があった。これを町民のマイカーで解決しようというもので、安全講習を受けた住民がマイカーで出かけるついでに、スマートフォンから予約した人を乗せる仕組みだ。バスの時刻表にも正式に「ノッカル」が組み込まれている。町南部の南保地区を例に挙げると、街へは平日3本のバスが走っているが、その他の時間帯に住民のマイカーによる「ノッカル」が最大5回組み込まれている。

時刻表(2024年4月)より一部転載

サービス開始から2年半が経ち、毎月平均して延べ約150人が利用している。70歳以上が9割を占める一方、10代の児童も利用しており、ドライバーとして関わる人も増加している。

町のDX化に取り組む「みんなで未来!課」の寺崎壮課長代理は、このサービスが受け入れられている背景には慶弔時の車の乗り合わせや農業の協力など、田舎の〝お互い様の精神〟が残っているからだと言う。とはいえ日常的に「乗せていって」、「乗っていかれ」とは言いにくい。それがスマホのアプリを通すと、お互いの気持ちが伝わりやすくなる。

 学びから交流・伝承へ

22年11月にはこのお互い様の気持ちを教育に生かそうと「みんまなび」が始まった。地域文化の継承が難しくなり、子どもが外で遊ぶ機会が減る中で、町民が講師となり町民同士が学び合う場を作るもので、LINEアプリを通じて講座の案内や募集を行っている。講座内容は地域の自然や食文化、工作やプログラミングなど多様で、これまで約100回の講座が開かれ、延べ千人が参加しており、学びだけでなく世代を超えた交流を楽しみにしている参加者も多い。

「和太鼓体験」の講座をきっかけに、関心をもった児童がその後も大家庄地区の太鼓の練習に参加し、お祭りでも披露する流れも生まれた。少子化の中で、地域文化の伝承にも期待が持たれる。

大家庄地区の太鼓会による講座

 DXは楽しい生活の基盤

今年1月にはマイナンバーカードを複合的に活用する「LoCoPiあさひまち」が始まった。サービスの一つであるポイント機能は、施設利用やイベント参加時にマイナンバーカードにポイントが貯まる仕組みで、施設の利用促進や外出機会の創出を図っている。同時に、家族は子どもや高齢者の行動を確認することができ、行政は施設の利用状況などが瞬時に分かるようになる。

さらに全国で初めてマイナンバーカードに現金チャージの機能を持たせた。ポイント機能と合わせて、町内の経済活動の活性化にもつなげていく考えだ。

新しいデジタル技術には高齢者が取り残されるケースが少なくないが、少子高齢化という全国的な問題に対し、朝日町は町民の生活に主軸を置き、一人一人が楽しく活動できるまちづくりを目指してDX化を進めている。

 

月刊富山県人 2024年6月号

 

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