高岡クラフト市場街(高岡市)

地域

銅器や漆器、アルミ産業など、ものづくりが盛んな高岡市で、2012年から工芸を中心としたイベント「高岡クラフト市場街(いちばまち)」が毎年秋に開かれており、昨年は地域の活力を生み出すイベントを表彰する「ふるさとイベント大賞」で最高の内閣総理大臣賞を受賞した。中心市街地の古い町並みを歩行者天国にしてクラフト作品を展示したり、ものづくりの体験や、クラフト作家の器で食事や和菓子を提供したりと、多彩な催しを企画して今年は9月21〜23日の3日間開催される。

人との出会いがテーマ

高岡市では1986年から毎年「工芸都市高岡クラフトコンペティション」が開かれ、全国からクラフト作家の作品が集まってくる。このコンペをもっと盛り上げようと始まったのが「市場街」で、初年度は過去に出品したことのある作家らにも声をかけ、色々な工芸品を展示した。以降は「食」や「音楽」と組み合わせたイベントや、銅器や漆器のものづくり体験、伝統的な家屋が並ぶ高岡の町歩きなど様々な試みを重ね、県内外から来場者を増やしてきた。

市内各所に会場が設けられ、ものづくりを中心に多彩な催しを展開

現在実行委員長を務める國本耕太郎さん(53)は「これまでの伝統産業は『モノの価値』を伝えることに力を入れてきたが、市場街ではものづくりに関わる『人との出会い』を大切にしている」と話す。

漆器店を営む國本さんは「高岡伝統産業青年会」の会長を務めていた2011年に、高岡銅器や高岡漆器の工房に足を運んで職人の話を聞く「高岡クラフツーリズモ」を実施。後に市場街の委員長になると、両イベントを合流させ、職人がバーテンダーとなってお酒を飲みながらものづくりの話を聞く「職人BAR」なども実施してきた。

きっかけとなったのは北海道の旭川で開かれている「旭川木工キャンプ」。家具職人らと交流する中で、「商品の出来栄え以上に、作り手の思いにエネルギーがある」と感じ、近年全国で注目を集める「オープン・ファクトリー」にいち早く取り組み始めた。

伝統工芸品は分業制で、銅器なら原型、鋳物、彫金、着色、漆器なら木地作り、塗り、螺鈿などと色々な職人が関わっているが、職人が表に出ることはほとんどなく、自分の仕事を過小評価する人も多いという。当初は工房見学に難色を示す人が多かったが、見学者から「すごい」と言われると仕事に誇りを持つようになり、だんだんとものづくりへの思いも語るようになった。県外から毎年市場街に来る高岡ファンも増え、高岡に嫁いだ女性もいる。

クラフツーリズモで作り手に出会う

365日が市場街に

國本耕太郎実行委員長

「毎年新しい切り口で、常に新しい『高岡ファン』を作っていきたい」と、今年は「コーヒーカップ」をテーマにした企画で、コーヒー好きとものづくりの接点を作ろうと計画している。こうした試みを継続してきたことで、地元の人の伝統産業への見方も変わり、またこれまで高岡と関わりの無かった業界の人も高岡伝統の技術に関心を寄せるようになってきた。

伝統産業は需要の縮小、職人の高齢化や後継者難など課題は多いが、少しずつ変化が起きてきている。3日間のイベントをきっかけに新しい人の繋がりができ、リピーターや新たな商品開発に結びつき、「高岡が365日市場街になるように」と今年も準備に余念が無い。

 

月刊富山県人 2024年9月号

高岡クラフト市場街ホームページ

市場街 〜 TAKAOKA CRAFT ICHIBAMACHI 〜
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