NPO法人 山田の案山子(富山市・山田)

地域

富山市の中心部から車で約40分の山あいにある山田地域に、加工施設を備えた農産物直売所「ふれあい青空市・やまだの案山子(かかし)」がある。中山間地域の特産品を販売するだけでなく、域外の人を呼び込む交流事業を積極的に展開し、地域活性化の拠点となっている。

学生をサポートしたのが始まり

2005年に1市4町2村が合併して富山市となった山田地域。旧山田村時代には、スキー場や温泉施設の開発による観光客の誘致や、ジャガイモやリンゴなど冷涼な気候を生かした特産品づくりなど、地域の特徴を生かした村づくりが行われてきた。

そして全国から注目を集めたのが、インターネットが普及し始めた1995年に始まった情報化政策。いち早く村内にデジタル回線網を整備して、希望家庭にパソコンを無料貸与し、過疎の山田村が情報化社会のお手本の「電脳村」として知れ渡った。

これに注目した全国の大学生が夏休みを利用して集まり、「パソコンお助け隊」となって各家庭の設定や使い方を教え始めると、地元の有志が学生の受け入れや村内の移動をサポートする「こうりゃく隊」を結成した。そしてこの活動はパソコンの支援だけでなく、学生と村民が交流する「電脳村ふれあい祭」として5年間続けられた。

パソコンの普及が一段落したところで、こうりゃく隊のメンバーは、次の活性化策として、週末にテントを張って地元野菜を並べる「青空市」を開始した。新線な野菜を求めて訪れるファンが年々増える中、「特産品の開発も行える常設の建物を」と、加工施設を兼ねた現在の直売所が2005年に完成し、07年に「NPO法人山田の」を設立した。

関係人口の増加を図る

地元の旬の野菜や加工品が並ぶ

直売所では、農産物や赤飯、団子など伝統食の販売に加え、地元農産物を加工したリンゴジャムやコロッケなどを商品化し、また地元産の蕎麦を振る舞う蕎麦屋も併設している。若林秀美理事長は「初代理事長(故小向敏雄氏)が仕出し屋を営んでいたこともあり、当初から惣菜や加工品の開発に積極的に取り組んできた」と振り返る。近年はサツマイモの栽培も始め、県内へ出荷するとともに、干し芋やジェラートを商品化するなど、常に新たな特産品の開発に取り組んでいる。

一方、合併時に千800人を超えていた人口は現在千200人を割り込み、20年間で3分の2になった。山田の案山子では、積極的に交流促進事業を行って関係人口を増やし、移住、定住のきっかけづくりを続けている。

農作業体験

直売所や季節ごとの感謝祭などに県内各地からやって来る人も多いが、農作業と田舎暮らしを体験する「農泊事業」も定期的に実施し、県外から何度も訪れるファンも多いという。またこうした地域活動を手伝う「地域おこし協力隊」を継続的に受け入れており、隊員の任期が終了した後もほとんどが定住している。その中にはジャガイモやリンゴの栽培に従事する人もおり、後継者不足に悩んできた地元の特産品を守る存在になっているという。

そば打ち体験

若林理事長は「人口減少は日本全体の問題」としながら、山田の案山子では地域の魅力と住民の生きがいを創出し、色々な人との交流を通して活性化を進めている。

 

山田の案山子ホームページ

タイトルとURLをコピーしました